ユニバース 3話
「う~。」
明流は目を覚ます。
「俺死んだはずじゃ...」
起きた先は見知らぬ部屋。明るい鉄製の部屋にテレビが一台。痛みは不思議と感じない。あれはかなりの重傷だった。レスピレーターやら輸液ポンプがついていても不思議ではないのだが。そう考えていると扉が開く。
―ウィーンー
「やっと目を覚ましたかい」
目をやると聞き覚えのない一つの声がやってくる。
「あんたは誰だ!アイツの仲間か!」
「いやだな~。いきなり威嚇か~」
「落ち着け!」
そこに現れたのは呂亥だった。
「なんだお前がここに?」
先ほど起こったことと現在の不思議な光景に情報量が追い付かない。そう考えていると呂亥はいきなりテレビをつけ始める。
―10月12日の午後3時頃に起きた七山高校(ななやま高校)の宇宙人襲撃の事件で木崎陽史(18)、圓谷光莉(18)の2名の死亡が確認されました。―
「なんだこれ。」
「ちなみにこれは録画な。お前には早く伝えようと思ったんだがな俺の口から言うのが少し気が引けてな。」
「お前は学校にいなかったのか!なあ!何でお前がいてこんな...」
怒りで彼を忘れた明流は呂亥の胸倉を掴む。
「話は最後まで聞くものだよ明流君。」
「あんた誰だよ」
「これは紹介が遅れて悪かったね!私は宇宙軍アジア管轄、総司令官且日本支部支部長風見操磨(かざみそうま)。よろしくね!日本支部のみんなからは支部長って呼ばれれるから君も支部長って呼んでくれもいいよ!」
(なんなんだこのテンションの高い人は)
明流は育ての親を失い、今かけがえのない友人すら失った。そんなときにこんなテンションで自己紹介するなんて不謹慎に他ならない。しかし彼は続ける。
「まあ君が起こるのも無理はないだけど話は最後まで聞こうか!君があの日倒れてから今は1週間が経った。いろいろ言いたいことはあると思うけどまずは聞いてくれ。君が寝ている間に何が起きたのかを。」
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―明流が倒れた直後―
「ふぅ~手間取らせやがって。剣にこんな力があるとはな。しかしこんなに危険なことがあるなんてな。旦那も言ってくれればいいのにな。」
何やら文句をたれながらゴストロ・ブラトンが剣を手に取る。
ザクッ!
「痛っ!」
剣がいきなり動き出しブラトンに反撃したのだ。
「お前らの好きにさせて堪るか!」
剣がしゃべりだし、さらに反撃する。
「ほほぉ~こりゃおもしれーや!剣がしゃべんのか!」
しかし剣も満身創痍。動きが遅い剣の動きをかわしブラトンは一撃のこぶしを喰らわす。
「おーい。もう終わりか―」
「くそ!俺が油断しなければこんなやつ...」
そして剣からの反応はなくなり、ブラトンは剣を手にしようとすると、
ブン!
衝撃が後ろから突き刺さる。思わず吹き飛ばされると、
「そこまでだ!」
ブラトンは後ろからの1つの声と複数の気配に気づき振り返る。
「ヘッ!ずいぶんと遅いご到着だな!」
「お前こそ余裕そうだな。A級犯罪者ガストロブラトン!」
「俺の名前を知っているとはお目が高いな~」
「お前が明流を、明流の祖父母を...」
「待て!呂亥!」
怒りに任せブラトンに突っ込む。
「うおおおお!」
ドン!
「なんだこのアリは」
彼の能力は自分の手をかざした方向に衝撃波を飛ばす能力。一見すると強そうであるが、ブラトンはものともせず呂亥は吹き飛ばされる。
「呂亥...お前こんなことしてただで済むと思うなよ!」
「確かにな!いくら俺様でもお前らに束になってかかってこられちゃー厳しいってもんだぜ!ってことでとんずらこかせてもらうぜー」
「簡単に逃がすと思ってるのか!」
「逃げられるから行ってだろうがよ!」
そういって左のポケットからスマホを操作しかと思えば、ブラトンの周囲を無数の霧が包み込む。
「待て!」
そういって支部長は能力を放つも時すでに遅し、ブラトンはそこにはいなかった。聞き間違いかもしれないがブラトンが消える前あの霧の中から「あ、やべ」と言う声が聞こえたが、操磨は特に気にしていなかった。
ところ変わって名もない惑星のとある廃墟。
「ていうわけなんですよ~旦那~」
どうにも情けない声を出すのはブラトン。
「でも失敗は失敗でしょ。認めなさいよ。本当にあんた使えないわね!」
「うるせぇよ!俺はお前に話してねぇんだよ!」
「何よいちいち鼻につく言い方するわね!」
「やんのか?」
「いいよ?初心者にやられて宇宙軍に取り囲まれたくらいで逃げ出すような弱虫に負ける気がしないもん!おまけに剣までおいてくるなんて本当に間抜けね!」
言い争うのはブラトンと謎の女。どうやらブラトンは口喧嘩は弱いらしい。
「二人ともやめろ。」
ビクッ!ある一人の声掛けに驚き黙り込む2人。
「どちらの言い分も正しい。今回想定外が起きすぎたのも事実、対処しきれなかったブラトンも失態も事実。だけど人は失敗をする生き物だよ。俺だってする。仕方のないことなんだ。そのあとは上司がしりぬぐいをしないとね。」
「旦那~」
「まさかインヴィ君じきじきに出るんじゃ?」
「悪いか?もしかして俺が負けるとでも?」
「そんなこと思ってないけど!」
先ほどまでの威勢のいいものいいとは裏腹に急にかしこまる女。
「もちろん一人ではないよ。メル、ついてこい」
「え?私?」
先ほどまで話していた女はメルという名前らしい。いきなりの指名に戸惑うメルにインヴィはお構いなしに続ける。
「これからはお前の能力が必要になってくる。そのための戦力強化には打って付けだ。」
「何するつもりで...」
「明日地球に行くぞ。もちろん2人でな。他のものは待機していろ」
「そんな無茶ですぜ!旦那!」
「時間がないんだよ。やれることは今やるしかない我らの目的のためにね。」
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「とまあ、ここまでが君が倒れた直後の出来事。そして事件は2日後に起きた。君が一番知りたいことだろうね。」
そう言うと続けて操磨は語り出した。
4話へ続く。